花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
けれどそれは徐々に崩れていった。

母が本気で俺を嫌っていると気付いたのは小学生にあがり前よりも自我が芽生え始めたところからだろうか。
そして、それと同時に母の"虐待"はいっそう酷さを増した。

「っやめて…!!近寄らないでよ、汚い!」
ばしんっ!!

「…え?」

その目はひどく憎悪を含んでいた。強く叩かれた頬はじんじんと痛んで、熱くて、俺は何も言えなかった。
頭が真っ白になった。どうして殴ってくるのか分からなかった。

学校から帰ってくるたび、毎日のように「死んで」「産まなきゃよかった」「話すな」多くの罵声を浴びせられた。
体には青い痣が浮かんだ。
毎日痛むそれを見ていると、自分の存在意義が分からなくなって…俺はやっと嫌われていることに気付いた。実の親でも子供に嫌悪を抱けることを知った。

そして、そんな俺に追い討ちをかけるように状況は更に悪化していった。

まだ優しかった父が俺にとっては救いであり、まだ完全に希望は砕けていなかった。
いつか父と母と一緒に…暴力なんて振るわれずに話せる日だってくるかもしれないとそう願っていたんだ。

そんな日なんて来ないというのに。

「───彗…俺はもうダメだ……」

その日は、仕事から帰ってきた父が顔を真っ青にしていた。疲弊している姿を見ると俺も胸が苦しくなった。

「どうしたの?お父さん…」
「もう無理なんだ!俺は…俺はもう、あいつと一緒になんていられない!」

その目は俺を見る母と同じだった。憎悪を含んだ目。
はぁはぁと荒い呼吸をさせた父はそれっきり俺には話しかけなくなった。
ご飯が食べられない時間が増えた。学校では給食を沢山食べて、家では冷蔵庫にあるものを勝手に探すようになった。

父は帰りが遅くなり、母はそれに比例するように怒りを俺にぶつけることが多くなった。
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