花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
「ぁがっ!痛っ…やめて!お母さ…!」
「アンタのせいよ!だからあの人が帰ってこなくなって…」

ブツブツと呪文のように唱えながら俺を殴る母。そこにはもう、俺の願いなんて叶う隙はなかった。

あの時、俺に気持ちを伝えたあの瞬間から父もきっと崩壊していたのだろう。
帰りが遅くなって俺のことも捨てた。でも家がこんな状況なら、仕方なかったのかもしれない。

そもそも何で二人が結婚したのかも、俺が産まれた理由も知らない。どこかでは愛し合っていたはずなのに。
それなのにどうして────裏切られるんだ?
分からないんだ。俺にはどうしてもずっとずっと分からないことが多すぎるんだ。

なんで母はいつも俺に酷いことをするの?

なんで父は浮気なんてしたの?

なんで二人は愛し合っていたはずなのにこうも簡単に砕けてしまう?

俺も────そうなるの?
人間はそういうもので、好きな人でもいとも簡単に傷付けられる。産まれてから教えてもらえたことなんて一度もない。
一生答えがもらえない疑問が頭の中を駆け巡るんだ。

「ぉ…母さん、と…さん、ねぇ、教えて…よ」
身体中にできた痣。これが答えだろうか。
母は俺を殴り終えてから、すぐにどこかへ出かけてしまった。置いてけぼりのままだ。

結局俺は産まれた時から───一人で、置き去りにされて、誰からも必要となんてされていない。

「うっ…あぁ…ううあああ!」
それが初めて俺が自分の意思で泣いた時だった。どうしようもなく辛くて、きっとこれからも変わらない現実がどうしようもなく苦しかった。
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