花火のように咲く、君の笑顔が見たいから

その日の学校は、なんだか不思議な感覚だった。久しぶりの教室で、みんなが私を迎えてくれる。先生やクラスメイトからも「もう大丈夫なの？」とか「無理しないでね」と心配の言葉をたくさんかけられた。

授業中、黒板を見つめる時間も、廊下を歩く足音も、いつもと変わらない風景なのになんだか新鮮に感じる。
しばらくの間、離れていた場所に戻ってきたような、そんな安堵感とちょっとした違和感が混ざり合う。

休み時間には唯がくだらない話で笑わせてくれたり、宙くんが何気ない会話をしてくれたりする。彗も、少し距離を保ちながらも私のことを気にかけてくれているのが分かる。私はふと、こうしてみんなに囲まれていることが嬉しくてたまらなかった。

学校が終わる頃には、少しだけ体が疲れたけど、それ以上に心は満たされていた。やっと戻ってきたんだ、そんな実感を抱きながら私は帰り道に向かって歩き出した。

以前の私なら家に帰るのがなんとなく億劫で、わざと遠回りしたり、寄り道をしたりしていた。でも今は違う。私は迷うことなく、真っ直ぐに家に向かう足取りを進めていた。

家に着くと、少しだけ息をついてそれから明日の準備を始めた。花火大会のことを考えると自然とわくわくしてしまう。浴衣はどれにしようか、髪型はどうしようかと鏡の前であれこれ考えていると、スマホが振動した。

ふと画面を見ると、そこには彗からのメッセージが届いていた。

[明日、家まで迎えに行く]
それを見た瞬間、胸の奥で何かがじんわりと温かく広がるのを感じた。思わずすぐに返事を打ち込む。

[わかった。ありがとう]
その短いやり取りが、これまで以上に大きな意味を持っているように思えた。明日は彗と一緒に花火大会に行く。そう実感した瞬間心がときめき、期待でいっぱいになる。

わくわくした気持ちで布団に入るものの、興奮してなかなか眠りにつけない。頭の中には明日のことがぐるぐると巡っていた。彗とどんな話をするんだろう。花火を見て、どんな気持ちになるんだろう。

明日のことを思い浮かべるたびに、顔が自然とにやけてしまう。そんな自分が少し恥ずかしくもあり、でもどこか幸せな気持ちにもなっていた。

「明日が楽しみだな…」

小さく呟いたその言葉は、やがてゆっくりと瞼を重くしていく。目を閉じながら、私は静かに眠りについた。