花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
心臓がバクンと脈打つのがわかる。脈が徐々に早くなって冷や汗が垂れてくる。
お母さんからだろうか。時計を見るともう時刻は5時となっていた。もうこんなに時間が経っていた事に驚いてしまう。

「ごめん、ちょっとスマホ見るね」
「あぁ」
猫と戯れ続けている彗を横目に私の様子がバレていない事に安堵した。親の事はできれば誰にも言いたくない。
よく"困ったことがあれば相談してね"とか"話せば楽になる"とか言う人がいるけどそれは解決できればの話だ。家の事なんて、誰にも変えることはできないのだ。

私は意を決してスマホの画面を開いて見てみる。
そこには一件メールがきていた。

[想乃ー!明日顧問出張みたいだから早めに終わるって!一緒に帰ろ]

その文字を見た瞬間に一気に全身の力が抜けていく。唯からだったのか…。
[そうなんだ、帰ろ!]と返し、安心感が頭を駆け巡る。けれど今の緊張感によってそろそろ帰った方がいいだろうと感じた。

「私、そろそろ帰ろうかな」
無理に笑顔を浮かべながらもこれ以上いるべきではないと思いそう伝える。
「そっか、じゃあ送るわ」
「え、家まで?」
「これから暗くなってくるだろ。一応」
思ったよりも律儀な彗に少し戸惑うが断るのも逆によくない気がして素直に従うことにした。
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