花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
暗くなると言っても外を見てみるとまだ夕暮れ程度だった。やっぱりわざわざ送らなくても良かったのではないかとちらりと横を見る。

私の視線に気付いたのか彗もふとこちらを見て視線が合った。ぱちっと目が合うとなんだか自分がずっと見てたみたいで気恥ずかしくて目線を落としてしまう。

「…また、見に来れば」

言い方とは裏腹にどこか優しくて、いつもとは違うような言い方の彗の言葉についまた上を向く。
もうすぐ家に着く頃だ。
でもいつも帰る時よりもなぜか心は落ち着いていた。

「うん。また猫ちゃんに会いに行くね!」
自然と口角があがる。次があることが楽しみになってしまう。
「あぁ、またな」

家に着くとすぐに彗は後ろを向いて帰ってしまう。
保健室の時と同じような光景のはずなのに、なんだかその時よりも彼の後ろ姿は優しく見えた気がした。

彼の気配がなくなり、私はふぅと深呼吸をしてから家の扉をそっと開けた。
怒鳴り声が聞こえてくると思っていたが、中からは特に物音や声は聞こえてこない。靴を見ても誰の靴もなくどうやら今は外出してるようだった。

「それならちゃんと鍵してよ…」

はぁと軽くため息を漏らしながら鍵を閉めるが誰もいないことに対して安堵する。
私は両親が帰ってくる前に、とすぐに手洗いを済ませて自分の部屋へと向かった。
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