花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
自分の部屋につくと一気に脱力感が体を襲ってベッドに倒れ込んだ。
今日あった事を思い出す。なんだか今日一日で一気に苦手だと思っていた彼と話をした気がする。

__「その笑顔。胡散臭い」
保健室で彗に言われた言葉を頭の中で繰り返す。胡散臭いかぁ。今までに言われたこともなかった言葉だった。
仮に思う人がいたとしても本人に言う人なんて聞いたこともない。

でも、何故だろう。デリカシーの一欠片もないし、普通嫌な気持ちになる言葉のはずなのに。
なのに私が真っ先に思ってしまったのは「何で見破れるんだろうか」という気持ちだった。

私が一つ一つ積み上げてきたものだ。慎重にガラスをくっつけて、綺麗に絵の具で塗りつぶしたような私の仮面。
なのにそれを勝手に剥がしてきて塗りつぶした絵の具を水で薄めてくるみたいなやり方。

__「また、見に来れば」

でもその剥がす手に悪意は感じられなくて。変わった人だと思う。今まで散々怖くて人間味がない苦手な人種だったのにたった一日で印象が変わるなんて。

私も大概変わり者だ。
そんな感慨に浸っていると、すぐにそれはぴしゃりとある音によって壊された。

ピコン。
[何で鍵しめてんだよ。お母さんのこと締め出して何したいの?]
ピコン。
[早くあけろ]

また始まった。今日一番のため息をつきながらも私はすぐに玄関へと向かった。

すぐに鍵を開けるとバタンッと大きな音を立ててお母さんが家にはいってくる。

「わざわざ鍵あけてたって言うのに面倒臭いことしないでよね」
響き渡りそうなほど大きな舌打ちをしてお母さんはリビングへと向かっていく。仮面は赤と少しの青で染まっていて怒った顔をしていた。
きっと私への怒りのお父さんへの不満だろう。

そもそも鍵を持たずに家をでる方が悪いというのに。そんな言葉を言う訳にはいかず喉元まででかけた言葉を呑み込む。
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