花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
お母さんは昔からこうだった。
普通の時もあれば妙に機嫌がいい時もある。
けれどすぐにヒステリックを起こして八つ当たりをしてくる時もある。

要は運だ。私がどれだけ仮面を見て伺っても意味はない。今日はまだいい方だと思う。
怒っているけれど私の方にほぼ意識は向いていない。
もう少しで6時。お父さんが帰ってくる前にお風呂に入ってしまおう。

「はぁ、イラつく…」
リビングを通る時もお母さんの小言が耳に響く。そこまで大きな声ではないはずなのについ聞いてしまう。私の悪い癖だろう。

浴槽へと向かいすぐに鍵を閉める。シャワーをだしてしまえば外の音は何も聞こえなくなった。

「疲れたなぁ」

誰にも聞こえない独り言はこの場でだけこだまする。
毎日、毎日、仮面を見るのが当たり前になっている生活。私にとってこれが良いことなのか悪いことなのかも、もう分からない。

家でも学校でもとにかく荒波をたてずに過ごしたいのだ。"普通"に過ごしたいんだ。

家でのことは慣れているだろう。なのになんだか今日は…なんでかな。いつもよりズキズキ心が痛い。

__「また、見に来れば」
どうしてか頭にはまた彗の姿が浮かんで視界がぼやける。
唯も、学校で話してくれる子達も…いるはずなのにどこにも居場所がないような気がして。そんな事を考えてしまう自分は我儘で、欲張りで反吐がでそうになる。

どこに行っても心は休まらないような気がしていつも心には穴が空いたような気分になるのに今日だけはどこか違ったんだ。

いつもより仮面を気にしなくてもよくて。自然に笑顔が溢れてしまう時が多くて。あの楽しさに慣れてしまわないように、強い水圧のシャワーを頭から浴びせる。

「ほんっと…良くないなぁ」

熱気で少し曇った鏡に映る私の顔には学校での笑顔なんてのは何一つなくて。頭に映る仮面は、青や黒がぐちゃぐちゃに混ざって何色かよく分からない。
仮面の表情はどんよりと憂鬱な顔をしていた。
< 23 / 91 >

この作品をシェア

pagetop