花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
関わるわけないと思っていた人とこんなにすぐに打ち解けられたのはなぜだろう。そんな疑問がふと湧いてくる。

「なんか、昨日初めて私達話したのに彗って話しやすいよね。何でかな」

笑みを浮かべながら彗に思ったことをそのまま伝えるとなぜか驚いたような表情をする。
けれどすぐにそんな素振りはなかったかのように「ま、俺だしね。当たり前」と茶化すように返される。

「なにそれ。自信満々じゃん」と無表情でボケだす彼につい笑ってしまう。

そんな時どこからかかすかに「ぐぅー」という情けない音が聞こえてくる。
「……」
私のお腹からだ…。忘れていたけれど朝から、というか昨日の夜から何も食べていないのだから当たり前だ。

「なに、腹減ってんの?」
「…ちょっと朝食べてきてなくて」
流石に昨日の夜からと伝えるのは心配させてしまいそうでやめておく。

「まだ学校始まるまで時間あるし寄ってく?」
そう言って彼は数メートル先にあるコンビニを指さす。お昼くらまでなら我慢できると思っていたけれどやっぱり食べた方がいいかもしれない。

気を遣わせてしまったなと思いながらも「うん、そうしようかな」と眉を下げて笑うことしかできない。
私の気持ちを汲み取ったのか「俺も買うもんあるから」と付け加えられる。

昨日も今日も、仮面は動かずとも彼からはやっぱり不器用な優しさを感じる。
< 28 / 91 >

この作品をシェア

pagetop