花火のように咲く、君の笑顔が見たいから

昔から、人の表情を見るのが癖になっていた。
誰かが怒っていると、胸がぎゅっと締め付けられるような苦しさに襲われる。たぶん、両親の喧嘩を見続けてきたからだろう。

でも、そのおかげか人の気持ちを瞬時に察して、どうすれば相手の機嫌を取れるのかなんとなく分かるようになった。
どうして相手は怒っているのか、どうすればその怒りが静まるのか、そう考えることが自然と身についてしまったのだ。だからこそ、"仮面"が見えるようになったときも、それを受け入れることができた。

気づけば、私も同じように"仮面"を上手に使うようになっていた。

「ほんと、想乃って最高！話聞いてくれてありがとね！またよろしく！」
りのんはそう言いながら、満足げに笑っている。

「うん、もちろん」
私も同じように笑顔を返しながら、心の中で小さくため息をついた。"最高"か、と自嘲気味に考える。そんな大した人間じゃないのに。

りのんとの会話が終わり席に戻ると、唯が勢いよく振り返り、小声で話しかけてきた。
「ねえ、さっきりのん、また彼氏の愚痴言ってたでしょ？あそこまでいくと、もはや惚気だよね」

「あはは…まぁ、仕方ないよ」

「想乃も毎回話聞いちゃうんだから」
唯はため息混じりに言いながらも、少し微笑んでいる。彼女のことを一言で言えば、天真爛漫だろう。
無邪気で明るくて、思ったことをすぐ口にする。
でも、それが彼女の魅力でもあった。
相手の気持ちなんて気にせず、ただ純粋に人を笑わせることができる。仮面なんて見えなくても、彼女にはそれができるのだ。