花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
ここまでしてもらって断るのも流石におかしいと思い「うん、大丈夫だよ」と不自然にならないよう笑顔を浮かべて返す。

「やったー!想乃と一緒うれしい!」

私が了承した事に喜んでいる唯を横目に私は宙くんに周りに聞こえない程度の声で「ありがとう」と軽く手を合わせて伝える。
「大丈夫だよ」と宙くんも小声で返してくれる彼の仮面に不満や怒りなどは一切ない事にほっとする。

それにしてもどうして声をかけてくれたのだろう。
さっきのはクラスの反感をかわない為の宙くんの気遣いだ。そんな事を考えていたら一つだけもしかして…という答えが思い浮かぶ。

「どうかしたの?」
そんな私の悩む様子に気付いたのか小首を傾げて尋ねてくる。
唯が近くにいるのを見て聞こえないようにと耳元へと口元を近付ける。私のしたい事が分かったのか宙くんも少し屈んでくれた。

「もしかして宙くんって…唯のこと好きだったりする?」
こっそりと小声で聞いた私の言葉に、彼は一度きょとんとしてからお腹を抱えはじめてくすくすと笑いだして「違うよ」と言ってくる。
彼の仮面を見ても嘘をついている様子はなく表情と同じく笑っている。

「誘った理由はね…」
「おい、戻るぞ」
私と宙くんの会話を遮るように彗が彼の肩をぐいっと掴んでそそくさと自分の席へと戻っていってしまう。

「あはは、じゃあまた今度にね!」と連れてかれている宙くんが結局何を言いたかったのか分からずじまいだ。
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