花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
「もう!!それって何よ!」

つい口に出してしまう。りのんの事でも頭がいっぱいだっていうのになんて事を言うんだ。
ひどいことを言う人だ。そう思っている…はずなのに、何故かさっきの不満や気持ち悪さは少しだけなくなっていて。
彗が…彗があんな変なことを言うからだ。

さっきの彼の顔を思い出す。嫌いな食べ物を見る子供みたいな、心底気に食わなそうな表情。いつも表情が変わらないからか、なかなか見ない顔だった。

「ふっ…ふは!あはは…!」
意味わかんないのに、ムカつくはずなのに、つい笑いが込み上げてくる。あんな事を言ってくるくせに彼からは嫌な雰囲気を感じないのはなぜだろう。

「お?想乃が笑ってる~彗くん?彗くんでしょ!」
支度が終わったのかご機嫌顔で唯が近付いてくる。

「もう、唯違うってば!ふっ…ふふ」
また思い出してくすくす笑いがこぼれてしまう。
りのんのことはやっぱり心配だ。でも、考えていたって仕方がない。
修学旅行の時に正直に聞いてみよう。いつもの私のように、相手の仮面をよく見て慎重に行動するんだ。
そうすればきっと大丈夫。

「想乃、彗くんといる時楽しそうだね」
「え?そうかな…」
はにかみながら突然変なことを言う唯に戸惑ってしまう。

「うん!なんて言えばいいのかなぁ、なんかね素って感じがして…笑顔がキラキラしてるの!」
笑顔…がキラキラ。一瞬ぽかんとしてしまう。
私は彗といる時、そんな顔をしてるだろうか?

「私といる時も、もっと笑ってよね!妬けちゃうよ」
そう言う唯の仮面には嘘なんてなくて。本当に思ってくれてるんだと嬉しくなってしまう。

「ふふ…もちろん!」
私はいつか、笑えるだろうか。
唯に一切嘘をつかずに自分の笑顔も、辛さも伝えられるだろうか。信用してないとかそんな訳じゃないけれど、怖くなってしまうんだ。

私の弱さはいつか…壊せるだろうか。
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