花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
「………」
「………」
私の隣に彗がどかっと座るがさっきの雰囲気もあってかつい沈黙が続いてしまう。

「…その、さっきありがとう」
周りに聞こえてはあまり良くないだろうと思い念の為小声で彗に話しかける。

「なにが?」
「彗が言ってなかったらもっと面倒な事になってたと思うから」

彗の仮面はいつも無表情だから分からないけれど、きっとこの場を収めるためにわざとキツイ言い方をしたのだと思った。私の勝手な憶測だけれど…彗はそういう人な気がするから。

「別に俺はなにも…もう寝ろよ」
素っ気なくて淡々とした彼の口調は冷たいように聞こえて、でもどうしてか落ち着いてしまう。
バスがもうすぐ出発すると言っている声が聞こえるが徐々に先生の声が小さくなっていくのを感じる。

なんでだろう。さっきまではこんなに眠くなかったのに…。彗が隣にきてから、何故か安心してしまって体から力が抜けていく。
最近はずっと仮面とか、家の事とか、さっきの事も…どれも考えすぎてしまっていて。
でも、今はいいや…考えなくてもいっか。

「…おやすみ」
微かに聞こえるその声が誰のものかはもうよく分からなくて、けれどそっと触れるような柔らかいそれはすごく暖かくて、優しく聞こえた。
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