花火のように咲く、君の笑顔が見たいから

少しの不安を感じながらもホテルに到着すると、班ごとに部屋に分かれて休憩を取るようにと指示が出た。
荷物を部屋に置き、少しの間各自で自由時間を過ごすことにする。

「ねえねえ、もうすぐ肝試しのペア決めだって！」
唯が笑顔で言いながら、私の隣に座る。彼女の明るい声に私も少し緊張が和らぐ。

「想乃は誰とペアになりたい？」
唯が私に尋ねてくる。その質問に少し戸惑いながらも答えた。
「うーん、誰でも…まあ、唯とだったら安心かな」
本当はそう思っているが、これも結局は運次第だ。
彗と同じペアでも話しやすいだろうなと思うが、それを言うのはなんだか恥ずかしくてやめる。

「私も想乃と一緒がいいな〜！」
唯は無邪気に笑いながら答える。
その時、先生が部屋のドアを開けて皆にくじ引きの準備ができたことを知らせてきた。

「よし、みんな集まって！これから肝試しのペアをくじ引きで決めるよー」
先生の声が響き、周りがざわめき始めた。

少し緊張しつつも、くじ引きに向かって列を作って一人ずつ順番に引いていった。
唯は私の後ろに並び、肩越しに「いい結果だといいね」と励ましてくれる。

心臓がドキドキと高鳴り、緊張で手が少し震えるのを感じた。
いよいよ私の番がくる。小さな紙が入った箱に手を伸ばし、一枚をそっと引き抜く。
紙を広げてみると、そこには「3」と書かれていた。
「3…か」心の中で呟く。
次は誰が「3」を引くのだろう。後ろで待っていた唯がくじを引く。彼女が紙を見て私に笑顔を見せた。
「あたしは『12』だって！残念、想乃とは違っちゃったけど、誰とペアになるか楽しみだね！」

「うん、そうだね」
少し寂しいけど、くじ引きだから仕方ない。
次にりのんがくじを引く。彼女が紙を開いた瞬間、少しだけ表情が曇るのが見えた。

彼女が引いたのは「3」。私と同じだ。

「え、りのんと…？」
思わず声が漏れてしまう。彼女とペアになるなんて予想していなくてどこか居心地が悪い気がした。
りのんは私を見て、一瞬だけ笑顔を見せるものの少し固い表情をしている。

「よろしくね、想乃！」と彼女は言う。
その声にはどこか緊張感が混じっていた。仮面を見るとやっぱり嫌悪がじわじと滲み出ている。

「う、うん、よろしく…」と返事をしながらも私の心は落ち着かない。
果たして肝試しがどんな風になってしまうのか、正直わからない。
宙くんがくじを引くと、「5」の紙を見せていて「俺は彗とペアだな」と言った。
笑顔の彼とは裏腹にその仮面には少しだけ不満の色があった。ペアになりたい人がいたのだろうか。
その反面、彗はというといつも通りの無表情で「早く終わらせて寝よ…」と答えている。

唯の方を見れば他の女子とペアになったらしく「よろしくね！」と楽しそうにしている。その笑顔を見ると少し羨ましい気持ちになってしまう。

全員の肝試しのペアが決まり、先生が皆に「準備ができたら、スタート地点に集合して！」と声をかける。
りのんと私はぎこちなく頷き合いながら、少し離れて歩き出した。