花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
バスが目的地に到着し、みんなが一斉に降りていく。
班のメンバーは次の行動を決めるために賑やかな雰囲気で溢れていたが、私は一人緊張感を漂わせていた。

莉桜と向き合って話をする。
バスの中で強く固めた二度目の決意だ。さっきみたいに逃げたりなんかしない。
そう思ってはいるものの、彼女に話しかけるタイミングが見当たらない。

「なに百面相してんだよ」
そわそわしていると隣に彗がやってきて声をかけられる。彼の軽い口調に私は少し気を抜く。

「…私できるかな」
不安を浮かべる私の表情を見て、彗が少し考えたあと口を開く。

「そんなのやってみなきゃ分かんないだろ。無理だったら、そん時は…まぁ慰めてやるよ」

軽く笑みを浮かべて茶化すように言う彼に「はぁ」とため息がでるけれど、自然と私も笑みがこぼれる。
彗と話していたらいつのまにか緊張感はほぐれていて、代わりに安心感が募っていた。
そんな会話をしていると、莉桜が少し離れた場所で一人地図を見ている姿が目に入る。

今なら、話せるかもしれない。いや、今しかない。
一歩、また一歩と莉桜の元へ進む。心臓が鼓動を打つたびに、鼓膜に響いてくる。

「大丈夫」
ふと背中に手の暖かい感覚が伝わってくる。静かな声がする方を振り向こうとすると、背中を軽く押されてしまう。

「わっ…!」
思わず声を上げた瞬間、私は莉桜にぶつかってしまう。
莉桜も驚いたようで目を見開いて私を見る。その瞬間、彼女の仮面が一瞬で変わった。

でも、もう逃げない。

「莉桜、一緒に少しだけ話せないかな?」
莉桜は少し驚いた表情を見せるが、想乃の真剣な表情を見て「いいよ」と答えた。
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