花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
どうすればいいのか分からなくなる。
もし本音を言ったら?二人は受け入れてくれるの?
私の気持ちをここで話したらこの話はなくなるの?

だけど、言葉が出てこなかった。喉に引っかかって何も言えなくなる。
心の奥でずっと何かが引っかかっているような、そんな感覚。

ふと、彗のことが頭をよぎった。彼が言ってくれた言葉が私を助けてくれた。
でも、今この瞬間私を助けてくれるものは何もない。私は自分でこの状況を乗り越えなければならない。あの時も出来たはずだ…だからきっと今だって。
私は意を決して重い口を開いた。

「…わ、私には決められない、離婚だってそんな急に言われても分かんないよ…!」
その声はひどく震えていて自分が思っていたよりもか細かった。爪が(てのひら)を刺すように拳を強く握りしめる。
初めて伝えた言葉だった。両親に不満なんて言えなかった。

それでも、重い沈黙が部屋を支配していく。その静寂を切り裂いたのはお母さんだった。

「は?なによ…口答えしないでよ!!!」
耳が張り裂けるようなその言葉に、私の意思はあっけなく崩れた。お父さんの方を見ても何も言う気配はなかった。
ただ両親の仮面が、歪んでいくのを見ていくことしかできなかった。怒りしか映さないその仮面に、私は何かを期待することすら無意味だと悟った。
胸の奥に冷たい風が吹き込むような虚しさが広がっていくのを感じる。

怒り、泣き崩れるお母さん。怒鳴ることすらやめて呆れ返っているお父さん。その中に私の存在なんて含まれてはいない。
私の意見なんて関係なくて、この人達にとってはどうでもいいこと。

ふと頬に冷たいものが流れるのを感じる。
「え…?」
それは私の目から溢れていたものだった。泣きたくなんてないのに、なぜか涙は止まらなくて。
けれどそんな私の姿すら両親の視界には入っていなくて、まるで自分の存在が消し去られたようだ。

涙で視界が滲む中、私は耐えきれずに駆け出した。
自分の居場所を求めて、ただ逃げるように玄関へと向かって外に飛び出した。
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