花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
どれくらい泣いていたのか分からない。ただ、気がつくと雨音が少しずつ静かになっていた。

「……?」

顔を上げると、ふと雨が止んでいることに気づいた。でも、それは雨が止んだわけではなかった。私の上に静かに広げられた傘が、冷たい雨から私を守ってくれていたのだ。

驚いて顔を上げると、目の前には彗が立っていた。
何も言わず、ただ優しく私を見つめながらしっかりと傘を握っている。

「…彗、なんで」

彼の静かな存在が、まるでこの雨の中に一筋の光を差し込んだように感じた。
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