花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
私の言葉にお母さんが少しずつ顔を上げた。
その目には、戸惑いと後悔の色が見える。お父さんも静かに息を吐いて視線を落としたままだ。

「ごめんなさい、想乃…私いつも自分勝手であなたの気持ちを聞いてあげられなかった」

お母さんが震える声で呟く。
「ずっと…私も余裕がなくて、皆に当たってたのは分かってたけど、どうしたらいいか分からなかったの」

涙が目の端に溜まっているのが見える。
そんな姿を見るのは初めてかもしれない。いつも強気で、涙を流したとしてもそれは私の為ではなかった。
自分を心から責めているお母さんが、今はこんなにも弱々しく見える。

「俺も…迷惑かけたな」

お父さんも静かに言葉を絞り出す。
「お前にはもっと、普通の高校生らしく生活してほしかったのに、そんなことすら叶えさせてやれなかった。自分が情けない」

二人の言葉に、私の胸が熱くなってくる。
お父さんが私に対して無関心だと思っていたけれど心の内では考えていた部分もあったのかもしれない。

両親が初めて、自分たちの過ちを認め私に謝罪している。それだけで少しずつ張り詰めていた心がほぐれていくような気がした。

「私も…ごめんね。ちゃんと言わなかった私も悪かったと思う。本当はもっと早く言うべきだったんだ、私のちゃんとした気持ちを」

私は泣きながら微笑んだ。

「でも、今からでも遅くないよね。私たち…ちゃんと話し合おう?家族として、一緒に考えたい」

お父さんは深く頷き、お母さんも涙を拭いながら微笑む。少しだけ家族としての絆が戻った気がした。

それでも、これで全てが解決するわけではない。
両親の離婚話はまだ残っているし、これからどれだけの困難が待っているか分からない。
けれど少なくとも前と変わっているということは分かる。自分の気持ちを正直に伝えることで、前に進む力を得れたんだ。

お母さんが、震える手で私の肩を撫でた。
お父さんも小さく笑い、目元を擦った。

「…俺たちもちゃんと変わっていかなきゃならないな」

その言葉に一瞬目を見開いてしまう。少しだけ未来が明るく見える。
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