花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
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お母さんの話が終わり、現実に引き戻される。
私は無意識に拳を握りしめていたことに気づき、力を抜いた。

彗がそんな風に私のためにそこまで動いてくれていたなんて…信じられなかった。でも、同時に心の中が温かくなるのを感じる。

「彗が…そんなことを…」

ぽつりと呟いた私の言葉に、お母さんは小さく頷いた。

「想乃、あの子は本当にあなたのことを心配していたのよ。私たちにも彼の気持ちが伝わってきて…私もちゃんと話をしなきゃいけないって、思ったの」

お母さんの声が震えている。ずっと抑えてきた感情が彼女の中でも崩れ始めているのが分かる。

「想乃のことが大事よ…本当に心の底からそう思ってる。でも私は弱いわ。すぐ人に当たったり傷つけてしまう」

お父さんも、お母さんの話に静かに耳を傾けていた。

「あの子が帰った後にね、私達話し合ったの」

『__辛い思いをさせると分かるなら自分達がするべきことを考えてください』

「私は…病院にはいるわ」
「…えっ?」
その声は優しく、けれど弱々しいものではなくてどこか覚悟が決まったような声色だった。
まだ頭の整理がつかないなかでさっきまで静かだったお父さんが口を開く。

「精神が安定しない以上、ここで約束をしても想乃が苦しまない保証はない。だから二人で話し合って決めたことだ」

「でも…それじゃ、お母さんは」
お母さんは私の為だけにこの家から出ていってしまうの?想像するとそれはすごく寂しくて、辛いものに思えてしまった。
けれどそんな私の思考はお母さんに遮られた。

「想乃、あなたに幸せでいてほしい、これ以上傷つけたくない。これが私の本音だよ」
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