花火のように咲く、君の笑顔が見たいから
学校についても私は仮面が割れた原因について考えていた。

私はさっき、唯に今までの本当の気持ちを伝えた。
仮面を見なくてもいいだろうとその瞬間に安心感を感じた。
やっぱり…仮面が見えなくなるカギは私の気持ちだろうか?

まだ私は、きっと家族に対して完璧に心を開けたわけじゃない。
今までの傷はどうしてもすぐに癒えてはくれない。だからこそ仮面がまだ見える。
けれどもしこれがカギなんだとしたらいずれかはお父さんの仮面も壊れるのかもしれない…。

そんなことを悶々と考えていると、学校に着いた彗と目が合った。


「…おはよう、想乃」

彗がいつもと同じように声をかけてくる。
いつも通りの彗の優しい声。だけどどうしてだろう。さっきまであれほど仮面のことを考えていたのに、彼の顔を見た瞬間に…頭が真っ白になってしまう。

「あ、お、おはよう…」

言葉がうまく出てこない。胸がドキドキして、まるで鼓動が全身に響いているみたい。あの日、彗に好意をもってると気付いて…こんなにも意識してしまうなんて。

気づいたら、彗のことばかり考えている自分がいる。彼が軽く笑っている、その笑顔がやけに眩しく見えてまともに顔を見れなくなってしまう。

今まで友達として接してきたはずなのにこんな感情は初めてだ。仮面のことなんて全部消えて、ただ彼のことだけが頭を支配している。
まるで自分の気持ちが、初めてしっかりと形になったかのように。

もう一度彗を見て、顔が熱くなっていくのがわかる。心の中で蓋をしてきた感情が一気に溢れ出したような気がして、動揺を隠せない。

「おい、大丈夫か?顔、赤いけど…」

彗が心配そうに近づいてくる。それに、さらにドキドキが止まらなくて何も言えないまま立ち尽くしてしまう。

「…あ!な、なななんでもないよ!!」
「いや噛みすぎだろ」
はぁ、と彗にため息をつかれて自分の慌てっぷりについ恥ずかしくなってしまう。

「それで…結局あのあと大丈夫だったのかよ」
その言葉にはっと我に返る。そうだ、彗にはまだ何も話していなかったのだった。
私は、自分の想いを伝えられたことやお母さんの決断について話をした。そして…彗への感謝も。

「あの時わざわざ家にきてくれたんだよね。本当にありがとう、彗…。」

私の言葉に少し目を見開いたがすぐに彗が口を開いた。でもすぐに、いつもの冷静な表情に戻りながら口を開く。

「別に。それは想乃が頑張った結果だろ…とりあえずまぁ、良かったな」

その言葉は彗らしく、まるで自分は何もしていないような言い方だ。でも、彼の表情が少し和らいでいるのがわかる。私のことを心から心配してくれていたんだ。そう思うと胸の中がじんわりと暖かくなっていく。

彗の優しさに触れて、ますます彼を意識してしまう。心が彗に引き寄せられていくのを感じる。
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