ひとりステージ
プロローグ

わたしの「声」は、はずかしがり屋だ。
はずかしがって、いつも、のどのあたりで立ち止まる。

そして、たくさんの目にさらされているとわかったとたんに、「僕はそっちに行きたくない!」と顔を引っ込めてしまう。

だからわたしは、必死に「お願い、出てきて!」と心で訴えかける。
大丈夫、怖くないよと、なるべく優しく語りかける。

でも、全然耳をかたむけてくれなくて、代わりに「声」の心が届くんだ。

やだ……みんな、こっちを見ないで──と。

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