ひとりステージ
ドキドキの合宿
五月三日、四連休初日の朝。
わたしは、うまく髪がセットできなくて四苦八苦していた。
うーん、なんかちがうなぁ。ちょっとズレてるのかな?
髪のセットと言っても、ポニーテールにしたりお団子にしたりっていうヘアアレンジではなくて、ウィッグを被るだけなんだけど。
ウィッグを被るのも、けっこう大変。
「いってきまーす」
洗面所の鏡に向かって、ああでもないこうでもない、としていると、そんな声が聞こえてきた。
ウソ! もうそんな時間?
時計を見ると、出る予定の時刻の、三分も過ぎていた。
大変、わたしも早く出ないと!
「さっちゃんは時間、大丈夫?」
ひょこっとママが顔を出した。
「大丈夫じゃない。わたしも行く!」
「いってらっしゃい」
「転ばないようにな」
ママとパパが玄関の外まで見送りにきてくれた。
うちのママとパパは、顔も雰囲気も似ていて、おだやかで優しい。
そんなふたりに見送られて、わたしも出発した。
走って走って、なんとか予定どおりの電車に乗れた。
今日はぜったいに遅刻できないんだ。
だって、勇劇部と演劇部の合同合宿の日なんだもん!