ひとりステージ
「お、おい……! なに泣いてるんだよ!」
「だって……っ」

気づいたら、目から涙があふれ出ていた。
うれしかった。吏くんが優しくしてくれることも、仲間と認めてくれることも、すごくうれしい。

だって吏くんは、いつも花丸をもらっている、すごい人だから。
ペケマークばかりのわたしとはちがう。

花丸の吏くんに、頼っていいと言われる日がくるとは思わなかった。
なんだかキセキみたい。


「あー! 吏先輩が咲を泣かせてる!」

涙をぬぐっていると、突然、鳴海くんが壁の死角から現れた。

「吏くん、サイテー」
「吏くん、ひどーい」

それから、鴻上くんと鳰先輩も。

「はぁ? オレが泣かしたんじゃねぇよ!」
「みんな、どうして……」
「吏が咲にひどいこと言わないかなぁって心配で」

わたしが尋ねると、鴻上くんが答えてくれた。

そっか。みんな、心配してくれたんだ。
吏くんのことだけじゃなくて、わたしができなくてくやしい思いをしていることにも、気づいてくれたのかも。

そうだとしたら、わたしは恵まれてるなぁ。
授業ではペケマークばかりだけど、人との出会いは、花丸の運勢だったんだ。

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