シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
定期契約
「⼀花さん、いらっしゃい! わぁ、今⽇はさわやかなお花なのね」
ガラガラと台⾞を押してきた⼀花を出迎えた貴和⼦は歓声を上げた。
先週は藤河エステートの受付を飾った残りの花だったから暖⾊系のものしかなかったので、今⽇は⽔⾊系の花を持ってきたのだ。
ガラッと雰囲気が変わっていいかと考えていた。
「貴和⼦さん、こんにちは。こちらの⽞関は⽩が基調なので、どんな⾊も合わせられていいですね」
⼀花はさっそく飾りつけを始めた。
今回はデザインを考えてきたので、作業が早い。
イメージ通りに花をアレンジできて、満⾜げにうなずいたとたん、後ろから声がした。
「花でこんなに印象が変わるんだな」
ビクッとして振り向くと、颯⽃だった。
(毎回後ろから声をかけるの、やめてほしい……)
ポロシャツにジーンズというカジュアルな恰好だけど、彼が着ると様になる。
腕を組んで壁にもたれた姿はモデルのようだ。
そう⾔えば、ここは彼の家でもあったと今さら思いながら挨拶をする。
「こんにちは、藤河副社⻑。おかげさまで仕事をいただけることになって、ありがたいです」
⼀花がお礼を⾔ったのに、颯⽃は顔をしかめた。
「家で副社⻑なんてやめてくれ。それに、ここではみんな藤河だ」
「そういえば、そうですね。失礼しました……颯⽃さん?」
なぜここの⼈たちは名前で呼ばせようとするのかと思いながら、⼀花は彼の名前を呼んだ。
あとで聞いた話によると、名字で呼ばれたら、なにかと⾊眼鏡で⾒られることが多くてめんどくさいからだそうだ。
名を呼ばれた颯⽃は眉を開いて微笑む。
快活なその笑顔に、⼀花の⼼臓はドクッと⾶び跳ねた。
職場じゃないからか、ため⼝になっているのがまた親しみを感じさせる。
「そういえば、うちのオフィスの花も好評だったよ。しおれてきたから撤去したんだが、もう花は飾らないのかと何⼈にも聞かれた」
「本当ですか!? うれしいです!」
「あぁ、センスがいいと思う」
褒められて、⼀花は⾶び上がりそうなほど喜ぶ。
もしかしたら、彼のオフィスの定期的な仕事ももらえるかもと期待の⽬で颯⽃を⾒た。
すると、それを感じたようで彼は苦笑して答える。
「悪いな。うちのオフィスは⾃社テナントの花屋を使うことになってるんだ。この間は例外だ」
明らかにがっかりした⼀花をなぐさめるように颯⽃は付け加える。
「仕事が欲しいなら、⺟が友達を紹介してくれるさ、なぁ、⺟さん?」
颯⽃は⾔いながら、リビングに続くドアを⾒た。
薄く開いていたドアの隙間から、貴和⼦が覗いていた。
ガラガラと台⾞を押してきた⼀花を出迎えた貴和⼦は歓声を上げた。
先週は藤河エステートの受付を飾った残りの花だったから暖⾊系のものしかなかったので、今⽇は⽔⾊系の花を持ってきたのだ。
ガラッと雰囲気が変わっていいかと考えていた。
「貴和⼦さん、こんにちは。こちらの⽞関は⽩が基調なので、どんな⾊も合わせられていいですね」
⼀花はさっそく飾りつけを始めた。
今回はデザインを考えてきたので、作業が早い。
イメージ通りに花をアレンジできて、満⾜げにうなずいたとたん、後ろから声がした。
「花でこんなに印象が変わるんだな」
ビクッとして振り向くと、颯⽃だった。
(毎回後ろから声をかけるの、やめてほしい……)
ポロシャツにジーンズというカジュアルな恰好だけど、彼が着ると様になる。
腕を組んで壁にもたれた姿はモデルのようだ。
そう⾔えば、ここは彼の家でもあったと今さら思いながら挨拶をする。
「こんにちは、藤河副社⻑。おかげさまで仕事をいただけることになって、ありがたいです」
⼀花がお礼を⾔ったのに、颯⽃は顔をしかめた。
「家で副社⻑なんてやめてくれ。それに、ここではみんな藤河だ」
「そういえば、そうですね。失礼しました……颯⽃さん?」
なぜここの⼈たちは名前で呼ばせようとするのかと思いながら、⼀花は彼の名前を呼んだ。
あとで聞いた話によると、名字で呼ばれたら、なにかと⾊眼鏡で⾒られることが多くてめんどくさいからだそうだ。
名を呼ばれた颯⽃は眉を開いて微笑む。
快活なその笑顔に、⼀花の⼼臓はドクッと⾶び跳ねた。
職場じゃないからか、ため⼝になっているのがまた親しみを感じさせる。
「そういえば、うちのオフィスの花も好評だったよ。しおれてきたから撤去したんだが、もう花は飾らないのかと何⼈にも聞かれた」
「本当ですか!? うれしいです!」
「あぁ、センスがいいと思う」
褒められて、⼀花は⾶び上がりそうなほど喜ぶ。
もしかしたら、彼のオフィスの定期的な仕事ももらえるかもと期待の⽬で颯⽃を⾒た。
すると、それを感じたようで彼は苦笑して答える。
「悪いな。うちのオフィスは⾃社テナントの花屋を使うことになってるんだ。この間は例外だ」
明らかにがっかりした⼀花をなぐさめるように颯⽃は付け加える。
「仕事が欲しいなら、⺟が友達を紹介してくれるさ、なぁ、⺟さん?」
颯⽃は⾔いながら、リビングに続くドアを⾒た。
薄く開いていたドアの隙間から、貴和⼦が覗いていた。