シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 ばれたとわかって、澄ました顔で貴和⼦が出てくる。

「もちろんよ。⼀花さんが望むなら、センスのいいフラワーデザイナーがいるって宣伝するわ!」
「ありがとうございます。助かります!」

 フラワーデザイナーの師匠から独⽴して、まだ⼀年⽬の⼀花には固定の顧客が少ないから、本当に助かる話だった。独り⾝だから、なんとかかつかつで⽣活できているレベルなのだ。

「ところで、⺟さんはなんでこっそり覗いてたんだ?」
「あら、だって、⼆⼈のお邪魔をしたらいけないかしらと思って。うふふ」

 少⼥みたいに笑った貴和⼦に、颯⽃があきれた⽬を向ける。

「変な勘ぐりをしないでくれよ。彼⼥とはなにもない」
「そうですよ、貴和⼦さん。颯⽃さんは私がトラブルに遭ったのを助けてくれただけです」
「でも、颯⽃が⼥の⼦を助けるなんて、めずらしいじゃない」
「ひどい⾔われようだな。俺は結構親切だぞ?」
「颯⽃が⼥の⼦に冷たいっていうのは有名よ?」
「それはめんどくさいことにならないようにだ」

 そのやり取りで、⼀花が貴和⼦にやけに歓迎されている理由がわかった。
 彼⼥は息⼦の恋愛話を期待していたのだろう。
 ⼀花も颯⽃も完全に否定したのに、貴和⼦は納得していないようだ。
 強引に誘ってきて、三⼈でお茶をすることになってしまった。
 それからも、⾏くたびにお茶をいただいて帰るのが定番になって、そこにたまに颯⽃も加わった。
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