シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

水も滴る……

 道路は混むこともなくドライブは順調で、⼼地よい⾵を感じながら⼀時間半で葉⼭近くに来た。
 ただ、残念ながら⽬的地に近づくほどに空に雲が多くなってくる。

「⼀⾬来そうだな。ルーフを閉めておこうか」

 颯⽃がつぶやいた瞬間、ぽつりと⼀花の頬に⽔滴が当たった。
 彼⼥が⾬と認識する前に、どっと⾬が降り始めた。
 ゲリラ豪⾬だ。

「わわっ!」

 滝のような⾬に打たれて⼀花が悲鳴を上げる。
 颯⽃がルーフを操作しているが、屋根が閉まっている間に⼆⼈はびしょぬれになってしまった。
 ウインカーを出して、颯⽃が⾞を路肩に停める。

「すまない。この⾞は性能も外⾒もとても気に⼊っているのだが、ルーフの開閉速度だけが他の⾞種より劣るんだ……」

 ハンカチで⼀花の顔を拭きながら、颯⽃がオタクっぽい⾔い訳を⼝にする。
 ⾃分も濡れて⽔が滴っているのに、それにはかまわず、本当にすまなそうな顔をしている。

「ふっ……ふふふっ、あはは! まさに⽔も滴るいい男ですね!」

 笑いがこみあげてきた⼀花は爆笑しながら、颯⽃の顔をハンカチで拭いてあげた。
 びしょぬれで⾼級⾞の中にいる⾃分たちの姿がおかしくて、笑いが⽌まらない。
 明るい笑い声に、ほっとしたような颯⽃も表情を緩める。

「君も⽔も滴るいい⼥だよ。そういうところ好きだな」

 颯⽃も軽⼝をたたき、スーッと⼀花の頬をなでる。

(す、好き?)

 跳ね上がった⼼臓を抑えようとしながら、⼀花は颯⽃をまじまじと⾒つめた。
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