シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 彼は照れたように⾒返してきたと思ったら、慌てて横を向いた。急にジャケットを脱ぎはじめる。

「濡れていてすまないが……」

 視線を逸らしたまま、颯⽃がジャケットを差し出してくるので、⼀花はきょとんとそれを⾒た。
 彼⼥の反応に、颯⽃は⾔いづらそうに⼝を開く。

「服が……」
「え、あ、あぁーっ!」

 ⾃分の服を⾒下ろした⼀花は、ブラウスが⽔で貼りついた上、透けて、下着がくっきりと⾒えているのに気づいた。
 悲鳴を上げて、胸を隠し、ありがたく颯⽃のジャケットを借りる。

「お⾒苦しいものを⾒せてしまって、すみません!」
「いや、こちらこそ、重ね重ねすまない」

 ⽬のやり場に困る姿を隠してもらって落ち着いた颯⽃はエアコンの温度を上げた。

「くしゅん」

 温⾵の勢いに⼀花はかえってくしゃみをした。濡れた服に⾵が当たって冷たい。
 彼⼥を気遣うように⾒て、颯⽃は提案してきた。

「この格好じゃどこにも⾏けないな。近くにうちのホテルがあるからそこに⾏かないか? 服を乾かそう」
「うちのホテル!?」

 そんな表現聞いたことがないと⼀花は驚愕の声を上げる。
 颯⽃はなんでもないように⾔う。

「あぁ、藤河グループのリゾートホテルがあるんだ。⾵呂で温まらないと⾵邪を引くだろう?」

 たしかに、ゲリラ豪⾬のせいで急激に気温が下がり、濡れているせいで寒くなっていた。
 温かいお⾵呂に誘惑されて⼀花はうなずいた。
 彼の⾔う通り、こんなに濡れた格好ではケーキ屋にも⾏けない。

「よし、すぐ着くからな」

 颯⽃は⾞を発進させた。
< 25 / 62 >

この作品をシェア

pagetop