シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 ラグジュアリースイートなる部屋はそれはそれは広くて豪華だった。
 ドアを開けると、⼀枚ガラスの窓から海が⾒える。
 今は残念ながら⼤⾬で灰⾊の海だが、晴れていたら爽快だろう。
 内装は全体的に⽩い中、差し⾊にセルリアンブルーが使ってあるので、さわやかな地中海リゾートの趣きだ。アール状の垂れ壁は⽩く、⽩⽊のフローリングの上にはラタンの⻑椅⼦が海を向いておかれている。

「素敵!」

 ⼀花が部屋を⾒回している間に、颯⽃は浴室のドアを開けて、湯船にお湯を張りに⾏ってくれた。
 そして、クローゼットから室内着を取り出して、彼⼥に差し出した。

「⾵邪を引く前に、これに着替えろ。すぐお湯が⼊ると思うから、⾵呂で温まるといい」
「ありがとうございます」

 ⾝体に貼りついて気持ち悪い服を着替えられると⼀花は喜んだ。
 室内着を持って、浴室へ向かう。
 後ろから颯⽃が声をかける。

「脱いだ服はランドリー袋に⼊れておいてくれ。乾かしてもらうから」
「わかりました」

 そういえば、彼がロビーで頼んでいたのを思い出し、さすが気が利くなと感⼼した。
 浴室に⼊った⼀花は、苦労して服を脱いだ。下着までぐっしょり濡れていたのでとても脱ぎにくかった。それを⽤意されていたランドリー袋に⼊れる。
 パウダールームからバスルームに⼊ると、楕円形のころんとした浴槽があって、そこもオーシャンビューになっていた。
 シャワーで⾝体を流して、浴槽につかる。

「あぁー、あったまる!」

 冷え切っていた⾝体がじんわりとほぐれる。
 ⼀花はリラックスして、浴槽の縁に頭をもたれかけた。
 そこに、トントンとノックの⾳がして、颯⽃が声をかけてきた。

「ランドリー袋を持っていっていいか?」
「はい、お願いします!」

 ⼀花が声を張り上げ返事すると、パウダールームで颯⽃が袋を回収するような物⾳が聞こえた。
 それで思い出す。
 濡れて⾝体が冷えているのは⾃分だけではないことを。

(いけない。あまりのんびりしていてはだめね)

 当然のように⼀花に先を譲ってくれたけど、颯⽃が⾵邪を引いたら⼤変だと急いで⾵呂から上がった。
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