シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

恋人のふり?

 タオルで⾝体を拭きながら、今さらながらに下着がないことに気づく。

(もう、私のバカ。下着はドライヤーで乾かせばよかった)

 後悔しても、ランドリー袋は持っていかれたあとだ。
 しかたなく、素肌に室内着をはおる。
 シルクでできた肌触りのいいバスローブだったが、薄くて、⾝体の線がまるわかりだった。
 髪の⽑を乾かしながら、鏡を⾒て、⾃分のあまりに⼼もとない恰好に、顔を⾚らめた。
 それでも、颯⽃をこれ以上待たせるわけにはいかない。
 ⼀花はおずおずとパウダールームを出た。

「お先に使わせてもらって、ありがとうございます」

 声をかけると、ソファーでくつろいでいた颯⽃が振り向いた。
 彼も⼀花と同じバスローブに着替えている。
 ⼀花の姿を⾒た颯⽃はゆっくりと瞬きしたあと、彼⼥を凝視した。
 ⽳が開いてしまいそうなほど強い視線に、⼀花は思わず後ずさりする。
 すると、颯⽃は視線を彼⼥に固定したまま、⽴ち上がった。
 ⼤股で近づいてくる彼を⼀花は⽬が離せずに⾒つめる。
 空気が急に濃くなり、呼吸が苦しくなった気がして、彼⼥は息を呑んだ。

「は、やとさん……?」

 かすれた声で彼の名を呼ぶが、颯⽃は⽌まらず、彼⼥を壁に追い詰めた。
 彼は壁に⼿をつき、⼀花を閉じ込めるようにして、覗き込んでくる。
 ふと視線を下にやって、彼⼥の胸もとを⾒た颯⽃はにやりと笑った。

「⽴ってる」
「だ、だって!」

 彼の視線の先には薄い布をツンと突き上げる存在があった。⼀花は慌てて胸を隠す。
 颯⽃は指の背で彼⼥の頬をなでてから、その顎先を持ち上げた。
 熱を帯びた彼の瞳と⽬が合う。
 ⼀花はしびれたように動けず、ただ、吸い寄せられるように、その瞳を⾒上げることしかできなかった。
 顎を持ち上げたまま、颯⽃が彼⼥の唇を親指で辿った。
 反応を窺うように、ゆっくり彼の顔が近づいてくる。
 逃げようと思えば逃げられた。
 でも、気がつけば、⼀花の唇は彼のものでふさがれていた。
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