シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 次に⼀花が⽬を開けたとき、周囲はまだ明るかった。
 ⾝を起こすと、広いベッドには彼⼥⼀⼈で、しっかりバスローブを着ている。

(さっきのは夢……?)

 ⼀瞬そう思ったが、⾝体中に残る颯⽃の痕跡に、現実だと思いなおし、顔を⾚らめる。
 枕もとに綺麗に畳まれた⼀花の服が置いてあるのに気づき、とりあえず、着替えることにした。
 ⾝づくろいをして寝室を出た⼀花は、颯⽃がソファーに座って、外を眺めているのを⾒つけた。
 気配がしたのか、彼が振り向く。
 ⼀花を⽬にした颯⽃は微笑んだ。
 その精悍な顔に浮かんだ笑みに⼀花の⼼臓が⾶び跳ねた。

「ちょうど⾬が上がったよ」

 ⼿招きされて、⼀花がそばに⾏くと、腰を引き寄せられ、膝に乗せられる。
 あまりにナチュラルなしぐさに彼⼥は⼾惑ったが、⽬に⼊った⾵景にハッと息を呑んだ。

「綺麗!」

 ⼤きな窓の外には⼀⾯の海と⻘空が広がり、⾬で洗われたのか、空気もキラキラ輝いているようだった。
 そこへ、七⾊のアーチが姿を⾒せる。

「虹だわ!」
「本当だ。久しぶりに⾒たな」

 歓声を上げる⼀花を後ろから抱きしめるような体勢で颯⽃が答えた。
 あまりの近さに頬に⾎が上った⼀花は横を向くこともできず、ただ虹を眺めていた。
 虹が消えたタイミングで、颯⽃が聞いてきた。

「腹減らないか?」

 その瞬間、⼀花のお腹がくぅと鳴った。
 真っ⾚になった彼⼥の⽿もとで笑い声がする。

「もう⼆時すぎだからな。なにか⾷べに⾏こう」
「はい」

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