シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 中途半端な時間だから、ホテルのレストランでランチをとることにした。
 和洋中あり、どれがいいか颯⽃に尋ねられ、⼀花は⼀番カジュアルそうな洋⾷を選んだ。
 それでも、海の幸をふんだんに使ったランチコースはしっかりデザートのケーキまであって、満腹になる。

「こんな時間だから、よかったら今⽇はこのまま泊まって、明⽇ショートケーキを⾷べにいかないか?」

 颯⽃の提案に、⼀花は逡巡した。
 明⽇は休みだから、時間的には問題ない。

(でも、あの部屋で颯⽃さんと……?)

 先ほどの情事を思い出し、顔が⾚らんでくる。
 それでも、もう少し彼と⼀緒にいたいという気持ちが湧き上がり、⼀花はうなずいた。颯⽃が破顔する。

(こんな満腹で⾷べてもせっかくのショートケーキがもったいないからよ!)

 ⾃分に⾔い訳をしながらも、彼のこの笑顔が好きだなと思ってしまう。
 ⾝体を重ねた男性のことが気にならないわけもなく、もっと颯斗のことが知りたいと思う。
 でも、彼はそれを望んでないのかもと考えると落ち込んだ。

 ――君だったら⼤丈夫そうだからな。ミイラ取りがミイラになるっていう⼼配はなさそうだ。

 ふと颯⽃の⾔葉がよみがえる。
 ⼀花だったら、⾃分を好きになることはないだろうと安⼼して⼿を出したのかもしれない。
割り切った関係として。

(でも、私は……。どうしよう?)

 悩む⼀花の気持ちも知らず、颯⽃は⽢いまなざしで誘ってくる。

「それじゃあ、せっかくだから、海岸縁でも歩いてみるか?」
「⾏きたいです!」

 先ほど窓の外に見えた海が頭に浮かび、一花は即座につられてしまう。
 ⼆⼈はホテルからすぐの海岸まで歩いていった。
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