シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 パーティーはホテルの⼤宴会場で⾏われるらしい。
 その⼤宴会場の⼊⼝には『いずみ産業創業三⼗周年記念パーティー』と⽴て札が置かれている。
 その前に受付があって、⼊場者をチェックしていた。
 颯⽃が名刺を出して、名を告げる。

「藤河颯⽃と⽴⽯⼀花だ」
「はい。承っております。中へどうぞ」

 名簿をチェックした⼥性がにこやかに誘導してくれる。
 颯⽃と連れ⽴って、会場に⼊ると、周囲がざわめいた。
 スーツ姿の男性は中⾼年もちらほらいたが、⾊とりどりの華やかなドレスを着た⼥性たちは若くて綺麗な⼈ばかりに⾒える。
 彼らから痛いほどの視線を浴びた。特に、若い⼥性からの値踏みの⽬が突き刺さる。

(私では釣り合わないって思われてるんでしょうね。わかってるわ……)

 いつもより綺麗にしてもらったとはいえ、この煌びやかな世界を⾒てしまうと、⾃分が場違いに思え、うつむきそうになる。
 颯⽃にパーティーではただニコニコしていたらいいと⾔われていたが、⼀花の笑顔は引きつりそうになった。
 例の嫌がらせ犯だけでなく、普通に嫌がらせを受けそうな勢いだ。
 颯⽃の⼈気の⾼さがうかがえる。
 彼のほうは注⽬されるのには慣れているようで平然としていたが、⼀花を気遣うように⾒た。
 ⼤丈夫だと視線を返して、⼀花は前を向く。
 彼⼥には重要なミッションがあるのだ。

「ドリンクをどうぞ」

 従業員に声を掛けられる。
 ⼊って左にドリンクカウンターがあって、参加者は皆それぞれ乾杯⽤のグラスを取っていた。
 シャンパン、ワイン、ビール、ソフトドリンクなど、さまざまなグラスが並べられていた。
 その奥にアネモネの絵が描いてあるオシャレな瓶が置いてある。

(あれはたしかベル・エポック?)

 瓶が気に⼊って覚えたシャンパンだ。
 飲んだことはなかったので、そのシャンパンを取る。
 颯⽃は⽩ワインを取っていた。
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