シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
「君からだって連絡くれてもよかったんじゃないか?」
「いえ、だって、私が颯斗さんに連絡するなんて……。遊びかもって思ってたし」
 
 拗ねた⼝調で⾔う颯⽃に、⼀花がしどろもどろで答えると、彼はまた額に⼿を当てうめいた。

「君も同じ気持ちだと思っていたよ。じゃあ、なんであのとき、俺を受け⼊れたんだ?」
「えっと、好きだったから?」
「どうして疑問形なんだ!?」

 ⾃信なげな⼀花の回答に、颯⽃は詰め寄った。
 あのときは正直⾔って、⾃分の気持ちがあいまいだった。彼に惹かれながらも踏み出していいのかどうかわからないまま、颯⽃の熱に流されたのだ。

(だいたい、いきなりだったじゃない!)

 そんなことを聞かれても困るとふくれて、⼀花は⾔い返した。

「だって、恋愛の経験少ないし、状況の変化についていけなかったし、恋⼈のふりだと思ってたから好きになったらいけないと思ってたし、颯⽃さんが結婚するって聞いて……」

 不安で切なくて苦しかった感情があふれて、話しながら⼀花は瞳が潤んできた。そんな彼⼥を颯⽃が抱きしめる。

「悪い。俺が悪かった」

 彼は謝りながら、泣き出した⼀花の背中をなでてくれる。
 その温かい胸に包まれて、ここがかりそめのものではなく⾃分がいていい場所なんだと感じ、⼀花は初めて⾃ら彼の背中に⼿を伸ばした。
 嗚咽を漏らす⼀花の顎を持ち上げ、颯⽃が優しく涙を拭ってくれる。
 そして、まぶたにキスを落として⾔った。

「それなら、⼀花が⾃信を持って俺を好きだと思えるようにしたらいいんだな」

 視線を上げた彼⼥の⽬に、不敵に笑う颯⽃の顔が映って、その表情に⼼が絡めとられる。

(もう充分好きだと思うけど)

 そう思うものの、颯⽃がどう好きにさせてくれるのかが楽しみになって、⼀花は微笑んだ。
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