シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 颯⽃のことは好きだ。でも、いきなり結婚まで話が進んでしまうと躊躇してしまう。

(当り前よね? ⼀⽣のことなんだもの)

「なぁ、どうすればいい?どうしたらうなずいてくれる? 百本のバラを贈って、毎⽇愛をささやこうか?」
「その際は、Green Showerにご⽤命ください」
「バカ。恋⼈に贈る花を本⼈に調達させるやつがどこにいるんだ!」

 彼がすがるように聞いてくるから、つい⼀花は茶化してしまった。
 凛々しい眉をひそめ、精悍な顔を曇らせた颯⽃を⾒るのは居たたまれなかったのだ。

「⾃信を持って颯⽃さんを好きだと思えるようにしてくれるんじゃなかったんですか?」

 そう⾔うと、颯⽃は⼀花の腰を引き寄せた。

「そうだったな。まずはそこからか」

 彼⼥を膝に乗せて、颯⽃は魅惑的に笑った。
 額にキス、⿐にキス、まぶたにキス。颯⽃はキスの合間に情熱的に⼝説き始める。

「⼀花、好きだ。どれだけ君が俺にとって特別か知ってるか? こんなに⼀緒にいて楽しい⼈はいないし、こんなに愛しくて離したくないと思ったのも初めてだ」
「私にそんな特別なところはないです!」

 その甘ったるい言葉に⼼臓が壊れそうにドキドキして、つい彼の⼝を⼿でふさいで、つぶやいた。
 そして、⾔ってから気づいた。
 決断できない最⼤の理由に。
 平凡な⾃分が颯⽃のようにハイスペックな男性に愛され続ける⾃信がなくて、プロポーズを素直に受け⼊れられなかったのだ。
 颯⽃は彼⼥の⼿を取り、指をからめる。

「こんなに俺を夢中にしといてか? ⾬に降られてもシャンパンをかけられても、笑い⾶ばせる君が好きだ。装花に⼀⽣懸命な君が好きだ。⼤胆なくせに恋愛にはこうして臆病になってしまうところも好きだ。君のすべてが好きなんだ」

 颯⽃は顔のいたるところにキスを落としながら、⽢い⾔葉を降らせ続ける。
 それが⼼に沁みていき、愛しさが募った。
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