シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 でも、ふと颯斗は手を止めてしまう。
 焦れた気分で一花が彼を見上げると、颯斗は切なく瞳を揺らした。

「まだ俺は⼀花になんの⾔葉ももらってないんだけどな」
「え?」
「⾃信持ててきたか? 俺を好きだって」

 ⾔われてみれば、颯⽃は何度も好きだと伝えてくれているのに、⼀花からは告げていない。
 さっきから焦らしているのは、⼀花に⾔わせようとしていたのだ。
 気がついたら、彼⼥はあられもない恰好なのに、颯⽃のほうはまだ着⾐のままだ。彼のほうは⾏為を進めようとしていなかった。
 颯⽃は⼀花の⾔葉を待っている。
 ⾔わない限り、彼を与えてもらえないらしいと悟り、⼀花は観念して⼝を開く。

「……好きな⼈とじゃないと、こんなことできないってわかりました」
「ってことは?」
「颯⽃さん、あなたが好きです」

 ここまでは気負いなく⾔えた。
 とっくの昔に好きだったから。

「⼀花、ようやく⾔ってくれたな」

 彼は快晴の⻘空のようにさわやかな笑みを浮かべた。
 その幸せそうな顔に⾒惚れる。
 颯⽃はギュッと彼⼥を抱きしめ、キスをしてきた。

「⼀花、俺も好きだ。愛してる」

 キスを落としながら、⾃分の服を脱いでいく。
 引き締まった筋⾁質の⾝体が現れる。
 ⼀花は思わず⼿を伸ばし、その筋をたどった。
 それが気持ちいいのか、颯⽃は⽬を細め、お返しのように一花の肌に触れた。

 好きな⼈とこうして抱き合えるのはなんて幸せなんだろうと一花は⼝もとをゆるめ、⽬を伏せた。
 颯⽃は⼀花のこめかみやまぶたに⼝づける。
 ⽬を開けた⼀花は⾃分を愛しげに⾒つめる瞳に出会った。

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