シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

エピローグ

「昇さんったら、ろくなこと⾔わないんだから!」
「いやあ、完全に勘違いしていて、すまなかったな」
「本当だぞ。⽗さんのせいで、俺は振られるところだったんだからな」

 貴和⼦が夫を責め、颯⽃も追随する。
 昇は頭を掻いて、謝った。
 愛を確かめ合ったあと、⼿回しのいい颯⽃はさっそく⼀花を⾃宅に連れていき、両親に結婚の意志を伝えたのだ。

「いいえ、私も誤解して確かめもせず、逃げてしまって、すみませんでした」
「⼀花は悪くない」
「⼀花さんは悪くないわ」

 頭を下げた一花を、颯斗と貴和子が異⼝同⾳でなだめてきた。

(この人たちは私に甘いわよね)

 声が重なった二人を見て、一花は笑ってしまう。
 さらに貴和⼦は息⼦を軽くにらんで咎めた。

「だいたい、颯⽃が誤解されるようなことをするからいけないのよ!」
「それは俺も悪かったと思ってる」
「葉山ではラブラブだったくせに!」
「なんでそんなことを知ってるんだ!?」

 ⺟親から注意されて、ばつが悪そうな顔をした颯斗だったが、葉山のことを出されて、目をすがめる。
 『ラブラブだった』なんて、どこまで知っているのかと、⼀花も慌てる。
 それを聞いていた昇がリークする。

「そういえば、貴和子は警備担当にあれこれ聞いてたな」
「もう、昇さんはそういうことをいちいち言わなくていいんですよ?」

 一花はぜんぜん気づいてなかったが、どうやら葉山でも護衛がついていたようだ。

(ってことは、あのホテルに泊まったのも、手を繋いで海岸を歩いていたのも見られていたの? 恥ずかしすぎる……)

 一花は護衛からどう見えて、どう報告されたのだろうと考え、真っ赤になった。
 取り繕うように貴和子が言う。

「と、とにかく、颯斗は一花さんを悲しませるようなことはしないこと!」
「当り前だ。そんなことわかってる」

 颯斗がムッとして答えたので、一花はフォローを入れる。

「はっきり聞かなかった私も悪いんです。勝手に勘違いして」

 颯⽃の⾔い分も聞かず、定期装花を辞め、連絡先をブロックした負い⽬があった。
 彼⼥に⽬を移し、貴和⼦は微笑んだ。

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