情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「夜はまた違う眺めになる」

耳元で低い声が響いた。
ドクンと鼓動が鳴る。

「そうなんだ。きっと綺麗だろうね」

「凪。ここで一緒に暮らそう」

え?

「というか、ここに住め。凪」

命令される。

きっとあのアパートを見てそう思ったんだろうな。
彼はとことん優しい。

「お前がどこに住んでたとしても、連れてくるつもりだった」

まるで私の考えがわかったかのように玄は言った。

「俺の女になるって事は、そういう事なんだ」

「玄と付き合うとそうなるの?」

「凪。お前、俺の事どこまで知ってる?」

え…
言われてみれば何も知らない。

「名前しか知らない」

「関東を統括する極道。黒澤組の若頭」

やっぱり。
だとは思ったんだよね。
黒澤組だったんだ。
店の子達が話してたのを聞いたことがある。
物凄い美形なのに、冷徹非道の若頭がいるって。
玄の事だったんだ…
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