情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「驚かないんだな」

「そっち系かなっては思ってた」

「そうか」

「雨の日に…透けてたから」

「ああ」

「よくわかんないけど、帰ってきてね」

「ああ。必ず」

玄は鋭い目をして真っ直ぐに私を見つめると、覚悟を決めたかのようにそう言った。

勘違いしそう。
そんな真剣に言われたら。
彼は私を好きだと言ったけど、それは私の生い立ちや、怪我をさせてしまった罪悪感から、玄を好きだと言った私を突き放せず言ってくれたんだと思う。

だってそうじゃなきゃこんな私の事なんて誰も好きになるわけがない。

私は話を変える。

「彪くんも黒澤組?」

「あいつは違う」

「彪くんを助けた友人って玄だよね?」

「聞いたのか?」

私は首を横に振った。

「名前は聞いてなかった」

「ああ。彪は小五から家に住んでた」

やっぱり玄の事だったんだ。

「あの人は…」

「刺した奴か?」

「…うん」

「ただのクソやろーだ。赤の他人。もう…いない」


たぶんあの人は…
彪くんの父親だ。
だってそっくりだった。
でも他人と言うんだからそうなんだろう。
もういないって…


今の彪くんがいるのは玄や、玄の家族達のおかげ。
彪くんはそう言ってた。

玄は優しい人だ。


「そっか」
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