情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「凪。こっちきて」

玄がリビングから抜けて廊下に出て、また扉を開けた。
一体どれだけ広いのこの家。

え…

そこにはL字に鏡が壁一面に張ってあって、一本のポールが取り付けられていた。

嘘…

「好きに使うといい」

「用意してくれたの?」

「まぁ。いるかなと思って」

入院中に⁈
3週間くらいしかなかったよね⁈

「嘘…」

驚いて動かない私を後ろからギュッと抱きしめた。

「でも傷がちゃんと治ってからな」

「うん。ありがとう」

どこまでも優しいんだ。

「凪。傷跡…残るって。悪かった」

やっぱり罪悪感…。

「そんなの。玄のせいじゃない」

私はついついムスっとしてしまう。
どんどんワガママになる。

「助けてくれてありがとな」

玄はそんな私を少し困ったように眉を下げて笑って頭を撫でた。

「でも、もう二度とするな。これからは俺に守らせろ。約束してくれ。危ない事はしないと」

だよね。これ以上罪悪感は抱きたくないはずだ。
私も余計な心配はかけたくない。

「わ、わかった」
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