情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「タトゥー?」

「そう。俺も。背中とかそうだよ」

「火傷?」

「そ。ボッコボコだからね俺」

そう言って彪くんは笑った。

「見たい」

そう言うとケータイを見せてくれた。

「ほら。これ」

凄い。
そこには般若心経がズラっと書かれた文字を背景にドーンと般若の顔があった。
写真をタトゥーにしたみたいな、とてもリアルな絵柄。
怒った時の彪くんみたいだ。
傷なんか全然見えなくなってる。

「凄いね! 全然傷跡わかんないよ? どのへん?」

「俺の背中ほとんど全体に傷あるよ。触ればわかる」

「玄もはいってる…よね?」

「見た事ないの?」

「ちゃんとは…」

「俺と同じ彫師がいれたんだよ。俺の師匠」

「そうなんだ」

「とりあえず、玄に相談してみれば?」

「うん。もしするなら彪くんがいい」

「もちろん」

そう言って彪くんはフワッと笑った。
さっそく帰ったら話してみよう。

傷が目立たなくなれば、玄も罪悪感から解放されるかもしれない。
その時はきっと私から離れていってしまうんだろうな。

これ以上苦しませたくない。

そう。玄は私を見ると笑ってるけどどこか辛そうな顔をする。
そのたびにスッと距離をとったりして…

離れていたくないなんて嘘だ。

玄は必要以上にほとんど近づいて来ないから。
< 124 / 259 >

この作品をシェア

pagetop