情炎の花〜その瞳に囚われて〜
凪…

顔にかかった凪の長い髪をそっととかし手に取る。

綺麗な髪だな。

長いまつ毛に、スッと筋が通り女性らしい曲線を描いた高さのある鼻。
唇はプクッと中央が膨らみ食べてと言ってるかのようだ。

陶器のような滑らかな肌。
そこに鍛え上げられたボディー。

ステージの上では人が変わったかのように激しいスピンや技を繰り広げる。

一方、ポールを握っていない凪は名前の如く波が穏やかになったように、静かだ。
というか、だいぶ自己肯定感が低い。

幼い頃に親から捨てられ、祖母に自分の存在意義を否定され罵声を浴びて育ったのもあるだろうな。

唯一、自分を表現する場所がポールダンスだったのだろう。

両方の凪を知る俺はそのギャップが、またどうしようもなく愛しくてたまらない。

本当に今までよく無事に守ってきたよな。

最後の最後に俺みたいなとんでもない奴に捕まっちまってるけど。

眠る凪の隣に寄り添うように横になり、後ろから抱きしめる。

俺がお前にとって最初で最後の男だ。
俺が全部教えてやる。
俺のこの深い愛を。

自由もなく、取り上げるものばかりの俺が唯一与えられるもの。

この命の限りお前を愛し抜く。
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