情炎の花〜その瞳に囚われて〜
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〜玄side〜

家に帰れば珍しく凪が玄関に来ない。

ん? 奥から僅かに音が聞こえる。

あ、練習してんのか。

「ニャー」

「ただいまヒョウ。いい子にしてたか?」

俺はちょこんと座って見上げるヒョウを抱き上げ、奥のスタジオに足を向けた。

防音にしているからか凪はまだ気付いていない。
ダウンライトの照明を少し落として、音楽をかけてすごい勢いでスピンを繰り広げる凪。

やっぱりすごい迫力だ。

黒のスポーツブラとブルマを身に纏い、髪は一纏めに高い位置で結っている。

そして左の太ももの付け根から腰を通り脇腹の方まで、綺麗な芍薬の花のタトゥー。

細いブラウンの線で描かれたいくつもの芍薬の花は、ぼかしが入ってとても女性らしい。
その綺麗なデザインは、凪にぴったりで彼女の魅力を更に引き出しているかのようにも見えた。

俺を浄化してくれるみたいな芍薬の花は彪が決めた。

俺にとっての安らぎであり、誰よりも高貴で美しく、暗い世界で生きる俺の荒んだ心の病を癒すかのような。
俺が人でいられるかのような。






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