情炎の花〜その瞳に囚われて〜
一目見たとき、「やられた」と思った。

彪は俺にとって凪がそういう存在なのを理解して、このデザインにしたのだと。

そして傷の上から描いた芍薬でこの傷を治す薬になるようにと。

彪からのわかりづらいメッセージだと思った。

自分の父親が俺の恋人を傷付けた事を、自分の友人を傷付けた事を、今でも彪はやっぱり気にしてたんだろうな。

額から汗を流して練習に集中する凪。

美しい。

誰にも見せたくない。
ここに閉じ込めてしまいたい。
俺の凪だ。

そんな考えが頭をよぎった。

そんな事できるわけないのに。
勝手に知らない客に嫉妬してしまう。

誰とも共有したくないと。

凪はものでもなんでもないのに俺の歪んだ独占欲が湧き立つ。
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