情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「いや。参ったな」

親父が珍しく砕けた口調を見せる。
だよな。

「おい玄。わかってんだろうな」

大事なイロ(女)ならちゃんと守れよ。
って意味だ。

「ああ」

玄は強い眼差しでハッキリと答えた。

「凪ちゃんと言ったな。玄と彪の親父の貴文だ。倅たちが世話になってんな。今後もよろしく頼む」

そう言った。
表情は変わらないにしても親父のその目は優しかった。
家族に向ける目だった。

「彪。お前、黙ってやがったな」

急に親父が俺に話しかけてきた。
それもそうだろう。
玄に聞いても教えてくれないからって俺に連絡してきてよ。
やれどんな子だ、やれかわいいのかだのって。

だから、"大人しくて強い子だ"とだけ伝えていた。
あとは見てからのお楽しみって事で。

「別に、何も隠してませーん」

「おい。みんな聞け。倅が女を連れてきた。お前ら頼むぞ。顔見せてやれ」

「凪」

そう言って立ち上がり、玄が凪ちゃんの腰に手を回してみんなに顔を見せた。

「「承知」」

一瞬の沈黙の後、声を揃えドスの聞いた声が大広間に響いた。

凪ちゃんはまた静かに頭を下げた。
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