情炎の花〜その瞳に囚われて〜
黒の長い髪は下の方で一つに纏め、上品なお団子になっていた。

そしてショー以外ではメイクをしない凪。
正月の挨拶でも軽くしていたが、今日はまた違うメイクをしていた。

立体的で艶のあるそんなメイクだった。

「お待たせ」

俺の前までくるとそう静かに言って少し恥ずかしそうに微笑んだ。

あまりの美しさにゴクっと喉がなる。

食いてえ。

なんとかこらえる。

「綺麗だな」

「玄こそ。オシャレだよねいつも。見て」

凪は自分の手のひらを俺に見せる。
ポールを握る際にできた長年の努力の成果によって、厚く固くなりタコができた手。

「こんなに素敵なドレス着てるのに…」

そう言って眉を下げて笑った。
俺は凪の手を取った。

「大丈夫。綺麗な手だ」

「玄…」

俺も拳を見せる。

「ほら。俺も。めちゃくちゃだ」

幼い頃から空手、柔道、キックボクシングなどあらゆる格闘技をしてきて、あとは実践による傷や怪我で俺の拳は潰れている。
耳もぐちゃぐちゃだ。


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