情炎の花〜その瞳に囚われて〜
車に乗り込むなり凪を抱きしめる。
自分でもわかってる。
俺には人として何か欠けていると。

凪にはあんな姿見られたくなかった。
ついに嫌われたかもしれない。

「凪…」

「玄…助けに来てくれたの? 探してくれたの?」

「当たり前だろ」

凪は俺を見るなりポロポロと泣き出した。

「怖かったよな。ごめんな?」

キスで涙を拭う。

「怖かった…」

だよな。

「ごめんな? 変なとこ見せて」

すると凪は首を横に振る。

「違う。もう、玄に会えないかと思って…」

ガンと頭に衝撃が走る。
あんな酷い姿を見たのに?
まだ俺をそんな風に…

「凪っ…」

強く強く抱きしめた。
すると凪もおずおずと俺の背中に手を回してくれる。

「俺の事…怖くないか?」

「怖くない。だって、私のためでしょ?」

思わず両手で凪の頬を掴み噛み付くようにキスをした。

車内にキスの音が広がる。

すると俺の携帯が鳴り、そっと唇を離し凪を片手で抱きしめる。

「はい。ああ。わかった」

その電話は組員からで、凪の戸籍を母親の籍から抜いたという連絡だった。
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