情炎の花〜その瞳に囚われて〜


聞くところによると、お母様はもうこの世にはいないらしい。

もともと体が弱かったのもあって、玄ができた時もとても喜んでいたのに、出産後間も無くこの世を去ってしまったとか。

きっと玄にたくさんの愛情を注ぎたかったろうに。
命をかけて産んだんだ。
愛したくても愛せなかった…

産んでも愛さない親もいる。

私はいつか玄との間に子供ができた時、ちゃんと愛してあげられるだろうか。

母親に愛された記憶のない私に。

ふと不安がよぎった。

そんな私を玄は、「大丈夫」と言ってるかのような優しい表情でコクっと頷いた。
< 223 / 259 >

この作品をシェア

pagetop