情炎の花〜その瞳に囚われて〜


スーツはたぶんめちゃくちゃ高級なブランドのオーダーメイドだろう。
彼のためにしつらえてあるからか、鍛えているのだろうとすぐにわかる肩幅に男らしさを感じた。

獰猛そうな一面を秘めているかのようなオーラにうっかり見入ってしまっていた。

私はショーが終わり高揚していたからか、普段は絶対にしないのに何を思ったかニコっと笑って見せた。

彼は表情を変えることなくスッと立ち上がりそのまま何事もなかったかのように出て行ってしまった。

ステージからはけた後も控室でしばらく動く事が出来なかった。


彼は見ているだけで拍手をくれなかった。

初めて悔しいと思った。

私に見惚れるほど魅了してやりたい。
思わず立ち上がってスタンディングオベーションしてしまうくらいに。

こんなに誰かを意識するなんて事思った事ない。

でもあのクールそうな彼から拍手をもらったらどれだけの高揚感を感じるのだろう。

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