情炎の花〜その瞳に囚われて〜
暗い路地裏で見つめ合う二人。

近くで見た彼は更にオーラが凄かった。

私を静かに見下ろすその瞳は漆黒に染まり、一度捕まれば抜け出せなくなりそうだ。

彼の瞳がぐらっと揺れたと思えばガシッと片手で顎を固定されキスをされた。

そしてすぐに唇が離れる。

いやだ。もっと。

私は何を思ったのか自分からキスをしてしまった。

そのまま傘もささずお互い言葉もなく、ただひたすら噛み付くような激しいキスに翻弄される。

この人が一体誰なのかもわからないのに、衝動を抑えることができなかった。

普通なら有り得ないこんな状況に処理しきれない私の脳は、すっかり考える事をやめてしまう。

彼の鋭い眼光の先に灯る情欲の炎。

この先の未来なんてどうなってしまってもいいと思う程にまっすぐ私を貫くような眼差し。

唇がやっと離れて解放されたと思えば、彼はすでに後ろを向いていて私の事なんて振り返る事もなく立ち去ろうとしていた。
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