情炎の花〜その瞳に囚われて〜
これまで数々の命の危険と隣り合わせで生きてきた俺でも、こんな高ぶりを感じた事はない。

動き出した彼女から目が離せない。
まるで囚われてしまったかのように。

次から次へとスピンを披露し、その度に客席からは大きな拍手が上がっている。

俺はジッと見つめる事しかできない。

一体なにが起こっている?

そして最後に彼女と目が合った。
ニコっと笑った。

俺は思わずステージに行って連れ出してしまいたいと一瞬でそんな事を考えてしまい、居ても立っても居られずスッと立ち上がりその場を後にした。

「若。もうよろしいのですか?」

付き人である松田 慶太(まつだけいた)がそっと耳打ちする。

「ああ。次だ」

他の店にもまだ行かないといけない。

まだ鼓動が速い。

クソ。

あの女。
この俺に何しやがった。

「女、用意しとけ」

「承知」

店の外に付けた黒のフルスモークのギラギラのドイツ製高級セダンに乗り込んだ。

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