情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「俺、絵だけは得意なんだ。玄…のも見せてよ」

俺は改めて言った。
二人壁を背にして肩を並べる。

玄がズイッとスケッチブックを俺に渡した。
ドキドキする。
どんな風に描いてくれたんだろう。
そしてスケッチブックを開いた。

「……ぶっ……はははは!」

「おい。笑うんじゃねえ」

意外すぎる。
面白すぎる。
あんなに成績もスポーツもダントツなのに。
玄が描いた俺の顔は壊滅的だった。

こんなに笑ったのはもしかすると初めてだったかもしれない。

そして俺はその日、スケッチブックを片手にルンルンと気分よく親父と二人で住んでいるボロいアパートに帰った。

帰った瞬間、酒に酔った親父にぶん殴られた。
あー。
今日はダメ日だったか。

親父は俺をボコボコに殴る。
顔も腹も背中も。
今日は背中にタバコの焼きまで付けられた。
クソっ。
いてぇ。
ぶっ殺してやりてぇ。
いつかぶっ殺してやる。
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